最近テレビなどメディアでもステンドグラスアートの作品をステンドグラスと呼び、ステンドグラスとステンドグラスアート(ヨーロッパではグラスアートと呼ばれる)の境目が一般の方々にわからないような表現が多くなりましたが、ステンドグラスとステンドグラスアートでは全く制法が違い作る作品も変わってきます。
ステンドグラスについて
ステンドグラスとは、ガラスを鉛線で組み込んだ作品のことです。もともとステンドグラスのステンドは英語の「stain=汚す、染みつける」からきているものであり、ガラスに絵付けをしているものを表していました。実際ヨーロッパの教会に入っているステンドグラスは絵付けされたものがほとんどです。最近ではヨーロッパから輸入されたアンティークの絵付けのステンドグラスを日本国内で見かけると思いますが、あれがステンドグラスの原点であり基本です。
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現存する世界最古の焼き絵付けの『キリストの頭部』と呼ばれるステンドグラスは、ドイツのロルシュ修道院跡から発掘されました。9~10世紀ロマネスク時代、アルザス北部ヴィッサンブールのサンピエール・エ・サンポール教会から出土。現在はストラスブールのノートルダム美術館に展示されています。(1060年~現在)
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焼き絵付けの制法にも二通り存在し、グリザイユと呼ばれるガラス用の絵具で描かれたものとエナメルと呼ばれるもので描かれたものがあります。グリザイユは数百年経っても色あせすることはありません。エナメル絵具に関しては、最近のエナメル絵具は550度前後で焼き付けしているため経年劣化する可能性を否定できないようです。
ステンドグラスアートについて
ステンドグラスアートは、ガラスの周りに銅テープを巻きそのガラスのピースをハンダで繋ぐ制法です。よく見かけるランプはほとんどがこのステンドグラスアートの制法で作られています。代表的なものにティファニーの作品が数多くあります。しかし、ティファニーの用いたカッパーホイルと呼ばれる制法は現在の作り方とは違い、ガラスピースの間に金属の補強芯を入れていました。今ステンドグラスアートと呼ばれる制法は、世界大恐慌の後に廃れたティファニーのカッパーホイル工法を第二次世界大戦後にホビー用としてアメリカで新たに生み出した制法です。
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上の写真は有名なティファニーのステンドグラス(カッパーホイル工法)です。
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こちらの3点は、ステンドグラスアートとして作られた作品です。どれも小さなガラスを使い作られた作品で、ケイム(鉛線)で作ることは難しくステンドグラスアートだからこその作品です。
上記のようにステンドグラスとステンドグラスアートの作品はデザインに基づき型通りにいろんな色ガラスをカットして形を整えそれぞれの製法で組み上げていくものですが、今から説明するフェイクステンドグラスはそうではありません。
フェイクステンドグラス(イミテーション、模造品)について
ステンドグラスとステンドグラスアートの制法以外で作られるフェイクステンドグラスには
①透明ガラスや型板ガラスの上に線描きをして色の着いたフィルムをを貼り付けたもの
②透明ガラスや型板ガラスにステンドグラス風の絵のシートを貼り付けたもの
③透明ガラスや型板にステンドグラス制作で使うガラスそっくりのフィルムで型を取って貼り付けその周りに鉛線を貼り付けたもの
④透明ガラスや型板ガラスに黒い樹脂で線を付け、その線に合わせて各色の樹脂を流し入れ自然乾燥させたもの
上記のような加工の仕方があり、厳しい言い方になりますが、全くステンドグラスとは呼べないものまでステンドグラスと名乗り売られている状況は消費者にとってとても悪い状況です。
材料もステンドグラス、ステンドグラスアートはアメリカや欧州からの輸入ガラスで作られていますが、フェイクステンドグラスではほとんどが国産の透明ガラスや型板ガラスにフィルムやシートを貼ったり、樹脂を使って加工を施します。また、テレビ番組の中でたまたま出てきた建物の窓の木枠に色ガラスをはめているだけのものであってもリポーターは「ステンドグラスが入っています」などと発言し、間違った情報を視聴者へ発信している事が悪しき状況をさらに広げているのが現状です。ちなみに、窓の木枠に色ガラスが入っているだけのものはフェイクステンドグラスにも入りません。ただ色ガラスが入っている窓というだけです。
このような良くない状況を少しずつ、ステンドグラス、ステンドグラスアート、フェイクステンドグラスと消費者がハッキリとわかって購入できるように変えていくことが一般社団法人日本ステンドグラス工芸士会の理念です。